僕のソーセージを食べてくれないか

そうです。私が下品なおじさんです。

出世だとか気にするタイプではないのだけれど。

魚には出世魚と呼ばれるタイプのものがいる。

 

たとえば鰤。漢字で書くと「鰤」となりなかなかにカッコいい佇まいだけれど、カタカナになった途端「ブリ」となり、なかなかに下品な印象を与える出世魚である。ブリが2本並ぶだけで食卓には子供の笑顔が広がるだろう。もちろん僕だって笑顔になる。

 

そんな可愛いブリであるが、実は関西と関東で出世途中の名前が変わるので、なんともめんどくさく感じる魚でもある。

 

少し話は変わるけれど、めんどくさくて可愛いといえば、筆頭に挙げられるのはアジャコングではなかろうか。

 

彼女の本名は宍戸江利花というのだけれど、その本名がまず可愛い。プロレスラーのヒール役だったにも関わらず今はWAHAHA本舗に所属しているのも可愛い。でもその理由がいまいちよく分からないのはめんどくさい。でもそこも可愛い。

 

そんなアジャコングの名前の由来は北斗晶により「アジャ」と名付けられ、その後団体のお偉いさんに「ブラック・サンデー」と命名されそうになり、別のお偉いさんから「いやいや、『ザ・アジャ』のほうがいい」と言われ、それは響きが悪いからと「アジャ宍戸」となり、その後体重増加にともない「キングコング・アジャ」へ、でも女性だからと「クイーンコング・アジャ」にチェンジし、でも長いからという理由で「コング・アジャ」となっていざ試合をしてみたらアナウンスしにくいので逆にしましょうよ、というアナウンサーの助言で最終的に「アジャ・コング」になったという。

 

これはもう可愛いとかめんどくさいを通り越しているし、結局女性だからクイーンとかいう配慮も長いという理由で一蹴されたり最終的に名前を決めたのはアナウンサーじゃねえか、みたいなアハ体験も感じられて本当に面白い。

 

あれだけ厳つい外見でありながら名前を巡る一連の流れに身を任せてしまうところも本当に可愛い。美空ひばりでなくとも「アジャの流れのように」と思わず口ずさんでしまうくらいだ。

 

話を戻す。

 

 鰤はアジャ・コングと同じように名前を色々と変えていく出世魚だけれど、関西では小さい方からツバス、ハマチ、メジロ、ブリとなり、関東ではワカシ、イナダ、ワラサ、ブリとなるらしい(もし間違っていたら僕ではなくウィキペディアを責めてほしい。世の中にある責任の所在は全て僕以外にあるというのが僕の持論だ)。

 

なのでたとえばスーパーなどの鮮魚スペースで「ハマチ」として並んでいれば、その魚のあげられた港及び捌いた調理人は関西であるはずなので、脂のノリもお笑いに対するノリもいいはずだ。

 

なのでハマチを見つけたらすかざず、「おっちゃん、このハマチ、ハウマッチ!」と勢いよく聞けばよい。

 

そんなあなたの革新的なボケに対して鮮魚コーナーの人はこう言うだろう。

 

「うるさいボケしばくぞコラしょうもないこと言うとったらぶちのめすぞ店員に迷惑かけんとさっさと買いさらせクソが」と。関西人は基本的にイラチなのだ。

 

間違っても「お客さん、ノリがいいねえ、海苔だけに!うーん、そいつはイクラでしょうかね?お、よく見りゃお客さん、そこの鰤よりラブリーだね、だから鯛でもおまけしてあげたいねえ!」なんて返してはくれないし、もしこういった返しをしてきてもクソつまらないのできっとそいつは関西人ではない。自分で文章を打ちながら寒気がする。

 

さて、出世魚ほどではないけれど肉に関しても年齢で変化することがある。

 

羊がその最たるものだろう。たまに羊肉をひとくくりにしてラム肉と呼んだりする人を散見するが、そもそもラムとは生後1年未満の羊の肉のことを指す。1年以上2年未満の羊肉はホゲット、2年以上のものをマトンと呼ぶのだけれど、これもいうなれば出世肉となるのではないだろうか。

 

ちなみにこれらの見分け方は年齢とは別に歯でも決められてしまうらしい。永久歯が生えていないのがラム、生後1年未満でも下あごに2本以上の永久歯が生えればホゲットとなるのだ。

  

しかしよくよく考えると、これは出世魚というよりアイドルに近いものなのかもしれない。

 

なぜならば、年齢が低ければ低いほどに人気が出てくる、すなわち高値がつくからだ。

 

若い肉のほうが柔らかくクセも少ない。しかも身体が小さいのでとれる肉の量も少なく流通量も限られるので、需要に対して供給が追いつかない。

 

アイドルもそうだろう。若いうちは歌がヘタでも踊りがむちゃくちゃでもその新鮮さによってちやほやされるが、20歳を超えてしまうと仕事が減り、まだ若いのにおばはんだと罵られ、いい歳をしてぶりっ子だなんだと文句を言われ、段々と需要が無くなっていく。悲しい物語ではないか。

 

しかしここまで考えながら、僕は少し憤りを感じた。

 

たとえば成人男性が若い女性を求めるとロリコンだのなんだのと罵られ、逆に年上の人を求めると尊敬されるような風潮がある。年上女房は素敵だとか、フランス人は女性を年齢で見ないだとかそういう話題は掃いて捨てるほどある。

 

しかし高年齢こそがすばらしいというのであれば、肉に関しても若いものよりも加齢の進んだものを好む方が尊敬されるべきであるが、どの料理店でも幼い肉の方が良く売られているし実際に人気もある。

 

先にあげた羊でもラムよりも若いミルクだけで育ったアニョー(ミルクラム)というものもありその低年齢化には空恐ろしいものを感じ、一昔前にあったとある漫画ではアイドルの低年齢化に伴ってそのうち卵子を崇め奉るなんていうギャグがあったのだけれど、それを彷彿とさせる。羊の卵子のソテーなんていうのは、奇人達の晩餐会でも出てこないのではないか。

 

翻って僕自身に関して言えば基本的に年上好きであり、また年齢がいった肉のファンでもある。

 

ラムカレーよりもマトンカレーの方が滋味深くて好きだし、骨付き鳥の名店、一鶴にいっても頼むのはいつもひなどりではなく親鳥であるし、最近人気のある若い女優さんたちよりも杉本彩贔屓であるし竹内涼真よりも竹野内豊に抱かれたい。

 

では逆に年を取れば取るほどに価値もあがるものといえば何があるかといえば、肉とも相性のいい飲みもの、ワインである。

 

特定の年代に作られたワインは高値がつき、古いものであってもこぞって欲しがられるお酒界の熟女部門である。 

 

かの開高健も、ロマネ・コンティ・一九三五なんて短編を書いているが、同じ年代に生まれた有名人といえば浜村淳(映画のネタバレで有名)、畑正憲(ムツゴロウさんで有名)、美輪明宏(携帯の待ち受けにすると運気があがるので有名)、ダライ・ラマ14世(よくわからないけど有名)、朝丘雪路(未だ公共交通を利用出来ないことで有名)などがあげられ、彼ら、彼女らも今なお第一線で活躍し、求められている人々である。

 

さてそのようにワインというものは長きによって熟成され、時間との繋がりがとても強いものだと再確認するが、実際僕の舌は年代の違いによる細かい味を見分けることができないし、僕の鼻は芳醇な香りの中に花を見つけたり果実を感じるような機能もついていない。悲しい。

 

なのでここからは僕が唯一見分けられるお酒について書きたい。それはワカメ酒と口噛み酒である。

 

見分けられる、とかいたけれど、上記に書いた様に糞みたいな鼻と舌を持っているので実際問題としてその味で見分けることは出来ない。

 

なのでその見究めを勉強するために両方ともに出来立てを所望したいというのが目下の希望であるが、そもそもそんな物を求める様になってしまったのは宮崎駿のせいである。

 

僕がジブリ作品の中で一番好きなものは「耳をすませば」なのだけれど、シーン別でいうのであれば、その最高峰のシーンは「もののけ姫」に出てくるサンがアシタカに何か固い板状のもの(多分ジャーキー的なものだろうけれど)を口移しで食べさせるシーンである。

 

なので僕は駿に性癖を定められたといっても過言ではないし、それ以外に僕の性癖嗜好に影響を与えたものは路上に落ちていたSM系のエロ本くらいで、もう本当に妻はもっと僕のことを罵ってほしいし、おしっこのことをご褒美って言い換えてほしい。

 

しかしまあ最近はそういった欲望の類いが表面上に出てくることがなかったのだけれど、少し前に「君の名は」をテレビで拝聴し、そこに出てきた口噛み酒にいたく興奮してしまった。

 

ああいいなあ、妻に口噛み酒を作って欲しいなあ、なんてことを考えながら生活している次第なのだけれど、いやはやここまでくると別に出世魚や肉の話やアジャやお酒の話なんていうのはどうでもよくなってきているし、なんなら食欲と性欲がごちゃ混ぜになっているからもうこの感情を抱えたままで女体盛りを食べたいなあ、妻の胸に刺身を乗っけてワカメ酒飲ませてくれねえかな、なんて考えているのだけれど実際には口には出せず、そんなことを考えていただけでいつの間にか週末が終わっていたからこれもまた悲しい物語だし、こんなことを考えているだけで週末を潰してしまう僕のような人間は鰤やアジャとは違って出世出来ないんだろうな、とも思いました。

 

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。そういえば僕も自慢のイチモツをまたぐらに挟んで正座すれば、ワカメ酒が作れます。それを頑張ってストローで吸えばなんとセルフワカメ酒ができ、最近お腹が出てきているのでそこに刺身でもなんでも盛れそうですし、そうなれば見た目はどうであれ女体盛りに近しいものもできるやも知れず、身の回りのものでこれだけ代替案が提案出来るような人間は出世が見込めるかもしれません。

 

まあ、とりあえず色々と頑張ります。